インドネシア語を学ぶ上で“ことわざ・比喩・たとえ”などの言い回しは大変重要な要素となります。その中には日本人を含むアジア人の信条や考え方、又謙遜や人生に於ける戒めなども含まれ、その共通性には驚かされるものがあります。インドネシアのことわざは日本にもあり、またその逆もありと言うことで、その意味するところに至極納得するものであります。
特に現地のインドネシア語の新聞を読み解く上でも、“比喩・たとえ・又短縮形”などをその感性とともに的確に理解することが重要であります。我々は、日本の新聞の見出しから概ねその内容が何の話題に関するものかを理解しますが、そこに結論が示されていないケースも多く、それが逆に人々を引き付け、興味をもってその記事を講読することになります。全く同じケースがインドネシア語の場合でもあり、
“ことわざや比喩”、“たとえ”の理解が非常に重要な手掛かりとなるのです。
様々な書物やブログでも、あらゆる“ことわざ”が解説されており、これらも大変興味深く拝読させて頂いておりますが、ここに私が初期に感銘を受けた“インドネシアのことわざ10選”を個人的な理解と共にご紹介させて頂きます。
インドネシアの文化、生活、考え方等を身近に理解するに恰好の教材となるものばかりです。又、“ことわざ”はインドネシア語技能検定試験でも、ほぼ毎回その内容の理解を問う出題がされておりますので勉強をしておく必要が御座います。
尚、現地でも<KAMUS PERIBAHASA>と言った“ことわざ辞典”があり比較的安価に入手出来ますのでお勧めです。
インドネシアのことわざ10選
Bagai katak dalam tempurung
Ada gula ada semut
Ada udang di balik batu
Tak ada api tanpa asap
Anjing menyalak tak akan mengigit
Sudah jatuh diimpit tangga
Seperti anjing dengan kecing
Bagai air di daun talas
Seprti padi, semakin berisi semakin merunduk
Bagai mendapat durian runtuh
解説と所感
解説は、個人的な見解と思い入れも入っておりますので、訳と内容に付きましては再度辞書等でご確認されることをお勧め致します。個々人の理解がその最初のインプレッションと共に記憶にのこるものと考えております。
1.井の中の蛙大海を知らず
Bagai katak dalam tempurung
・Bagaiには、~の如くとの意味があり、この様な使い方はことわざ表現に良く見 られます。Seperti~のようと同義に使われており、記載される本によって双方とも使われているケースがあります。
・katak=蛙であるが、日常的にはkodokが用いられるのだと思う。
私も、このことわざを知るまで、katakと言う表現は知りませんでした。
・dalam=中、或いは深く、と言う意味を持つ。
・tempurung=ヤシの実の内果皮(固い皮)
・日本語の井の中が、ヤシ殻の中と異なるが、意味は同じで
“自分のせまい知識や見方にとらわれて、ほかにもっともっと広い世界があるこ
とを知らないものをいう。”
・インドネシア語でこのことわざを始めて見た際には、ピンときて、あーなるほど
これは面白い言い回しをするものだと感心しました。確かにヤシ殻はインドネシア
ならばどこにでもあるもので、非常に身近に感じたものです。
2.甘いものに蟻が付く
Ada gula ada semut
・Ada=ある。gula=砂糖。semut=蟻。
・砂糖が有れば蟻がいる。と直訳されます。人を蟻に例えているところも、正に
日本語と同じですね。
・“利益のあるところには人が寄ってくることをいう。”意味も同様です。
・「金の切れ目が縁の切れ目」これはある意味、逆説的なことわざかもしれません。
3.うまい話には裏がある
Berudang di balik batu
・Berudang=udangはエビ(海老)で、Berを付けることにより“いる、ある”
との意味(動詞形)になります。
・di=どこどこに、balik batu=石の裏側
・直訳すると、“石の裏にはエビがいる。”となり、比喩的な表現そのものは日本語で
見当たりませんが、その意味は“裏に何かがある”であることから、うまい話には
何か裏があるとの意味合いになります。エビは貴重品、価値のあるものとして捉
えられていますが、どうやらそこには少しやっかみが含まれている気がします。
4.火のないところに煙は立たぬ
Tak ada api tanpa asap
・Tak=否定形、ada=ある、api=火、tanpa=~無くして、asap=煙
・直訳で、“火のないところに煙は立たぬ。”となり、全く日本語と同意です。
・“いくらかでも事実がなければ、うわさは立たないということ。”
・その他同意でも色々な言い回しがあるようですが、火と煙は常にセットで
「切っても切れない関係」にあるようです。
・ Asap datang dari asalnya api / Kalau tak ada api,masakan ada asap
5.吠える犬は噛みつかず
Anjing menyalak tak akan mengigit
・Anjing=犬、menyalak=吠える、tak=否定形、akan=未来形、
mengigit=吠える
・“口やかましいものは、恐れるに足らず。”の意。
・日本語とほぼ同意となっています。
6.泣きっ面に蜂
Sudah jatuh diimpit tangga
・Sudah=過去形、jatuh=落ちる、diimpit=圧迫される、挟まれる、
tangga=梯子、階段
・“不幸が重なることの意。”で、表現は異なるが「梯子から落ちた上に、更に
梯子が落ちて来て下敷きになる」と重なる不幸を示しています。
・インドネシア語では、蜂に刺されたとは表現しないようです。
7.犬猿の仲
Seperti anjing dengan kecing
・Seprti=のよう、anjing=犬、dengang=~と、kecing=猫
・“仲の悪い間柄を表す。”
・インドネシア語では犬と猫となるが、日本語でも犬と猿・又は犬と猫
と表現することもあるようです。
・逆に仲が良い動物は、何と何でしょう?分かりません。
尚、犬と猫でも仲の良いケースは普通にあるように思いますが。
8.女心/男心と秋の空
Bagai air di daun talas
・Bagai=~のよう。air=水、daun=葉、talas=タロイモ
・「タロイモの葉の上の水の如し」が直訳となります。
タロイモの葉は、表面張力が強く、水をはじきます。はじかれた水は
どこに伝って落ちるかわからない。そこから、“常に変わりやすい状態。”を例
えたものです。
・女心として覚えていましたが、どうやら男心も同意で使われるようです。
(男女平等)です。
9. 実ほど頭を垂れる稲穂かな
Seprti padi, semakin berisi semakin merunduk
・Seprti=~のよう、padi=稲、semakin=~するほどに、berisi=実る(中身が
入っている)、merunduk=頭を下げる
・“稲穂は、実ほど頭が低くさがるものだが、人間も得が高く、内に充実したもの
があるほど謙虚だということ。”
・日本語と同様の表現で、同意です。インドネシアでも同じ感覚なのですね。
10.棚から牡丹餅
Bagai mendapat durian runtuh
・Bagai=~のよう、mendapat=手に入れる、durian=ドリアン(果物の王様)
runtuh=崩れ落ちる、墜落する
・“棚から牡丹餅が落ちて来るように、思いがけない幸運が転がり込むこと。”
・インドネシアでは果物の大様、ドリアンが上から落ちて来ると表現しています。
実際、高所からドリアンが高所から落ちてきたら、結構危ないとおもいますが。
ドリアンは、南国には沢山ありますが、やはり貴重な品だと思います。
以上、10選を上げましたがまだまだ面白い表現が多くあります。インドネシア語のみならず、インドネシアの文化を理解する上でも、ことわざの勉強は大変役立つと思います。尚、ことわざの理解は、インドネシア語検定試験の四択でほぼ毎回一問の出題があります。今回の10選は概ねC級レベルです。A-B級になると、更に理解が難しいものが
出題されますので、更に勉強を重ねて下さい。日本語との比較は非常に面白いですよ。
今回、下記の辞書にて意味や表現の確認を行いましたが、私の個人的な解釈にて記載していますので語釈している可能性もございます。勉強される際には、ご自身で辞書等を見て、自らの解釈を見つけて下さい。最初のインプレッションが大切です。
*新修ことわざ辞典(株式会社集英社);日本語訳で引用
*KAMUS PERIBAHASA; SARWONO PUSPOSAPUTRO著
発行;PT GRAMEDIA PUSTAKA UTAMA;インドネシア語参照
Reference material